<   2006年 09月 ( 9 )   > この月の画像一覧

 

ピース

助けを求めて一つ手を伸ばせば、
また二つ目が逸らされる。

愛を求めて涙を流せば、
全てが滲んで見えなくなる。

孤独を恐れて叫べば、
人ごみの中ではかき消される。


傷ついても尚まだ人を求める愚かしさが人間というものならば、
生れ落ちたその時から、人は魂には枷が課された生き物に過ぎない。
賢い、強い、素晴らしいと虚勢を張っても、
自分たちはその悲しみを忘れたことはない。

救いのないこの渇きは、何で埋めるのだろう。
癒しのないこの寂しさは、何で埋めるのだろう。

探しているのは、無償の安堵。
探しているのは、無条件の安定。

なくしたものは…。
なくしたものは、大きなパズルの小さな1ピース。

最後の足りない1ピース。
それは時間が形を歪めて後、無造作に私の横に転がっている。
粘着質な感情のカタマリ、幸せの結晶。
[PR]

by ryo-ta-n | 2006-09-28 01:15 | 日記  

長雨

静かに降る雨も、
荒々しく降る雨も、
どの雨も違う声を持っている。

雨の日は、そっと耳を澄ますのがいい。
雨の声と、自分の心臓の鼓動が重なり合う一時。
自分が景色に溶けこむ一時。

自分を忘れる一時。
[PR]

by ryo-ta-n | 2006-09-27 01:46 | 雑記  

かぐや姫

この世の者とは思えないほどの美しさを持った彼女。
翁がいなければ竹の中で朽ち果てたかもしれなかった彼女。
御門に求婚までされた彼女。
不死の妙薬も持っていた彼女。

でも、満たされなかった彼女。
育ての親とも永劫の決別をしなければならなかった彼女。
ただただ月からの迎えを受け入れるしかなかった彼女。

彼女が涙に暮れた最後の八月。

冷たい秋風が吹く澄んだ空で満月が輝くのもまた、古き暦で八月。




秋は遠くに思いを馳せ、心の中の穴に気がつく、そんな季節。
[PR]

by ryo-ta-n | 2006-09-23 22:26 | 雑記  

年月

今、僕は若い。
でも、昔はもっと若かった。
高校生、中学生、もっと戻れば幼稚園生だった。

これからも僕は老いていく。
一年、五年、十年と、確実に時間が過ぎていって、
僕の年齢がその度に増えていく。

僕はその時、今よりも老いているだろう。
顔のしわは増え、手は節くれていくだろう。
そのもっと先では、目も耳も不自由で、今のようには歩けないかもしれない。



老いるということは、怖いことだと僕は思っている。
でも、世の中には美しく年を重ねている人もいるのを、僕は知っている。
もっとも彼らも、きっと老いるということは怖いに違いない。

ただ、何かその恐怖を昇華できる方法も知っているんだろう。
その方法はいくら聞いても、彼らは分からないという。
無意識のうちに、その術は身についたのだろうか。



早くこの「老いる」を「年を重ねる」へと変えてしまいたい。

未来の僕が、今の僕により近いものであり続けるために。
[PR]

by ryo-ta-n | 2006-09-21 03:16 | 雑記  

未読

人にはあまり言うことはないし、言う必要もないが、実は本をよく読む。
社会批評、技術、風俗学、哲学、How To本、何でも読む。
中でも小説をよく読む。
電車の中で、トイレの中で、暇つぶしでと
お手軽な本と、お手軽な読み方が蔓延しているようだが、かなり集中して読む。

手を伸ばせば本の中のものに触れられ、
目を閉じれば登場人物に重なることができ、
耳を澄ませば情景の中の全てが聞こえる。

そのくらいに集中して読む。



でも、最後まではなかなか読まない。
正しくは、読めない。
最後の数ページまでくると読めない。
どうしても、ページがめくれなくなる。

先が読めている、などということはない。
そんなに頭も良くない。

最後のページ、そこに待っているのは間違いなく「終わり」だ。
心の中に確かに形成したその世界を、最後のページは壊してしまう。
終わるのが怖い。
自分が消えるのが怖い。


俺の部屋の本棚には、最後の数ページだけがまだ開かれていない本が、
何冊も何冊も再び開かれる時を待っている。
[PR]

by ryo-ta-n | 2006-09-14 00:11 | 雑記  

羽虫

机の上のスタンドに、小さな羽虫が飛び込んできた。
人でも触れれば火傷は免れない蛍光灯に、
勢いよくその小さな小さな羽虫は突っ込んで行き






そして死んだ。






全ての怒りと、晩夏のむせるような悲哀を、その身に乗せて、勢いよく。
不条理な命の理と、無常な世界への反抗をその身に刻み、
今羽虫はスタンドの下で横たわる。
煌々とスポットライトを浴びながら。





ああ、覚悟を決めた者の魂は、かくも美しい。
[PR]

by ryo-ta-n | 2006-09-12 01:25 | 雑記  

光、白。

夜、淡い黒。

水、碧。

風、浅葱色。

太陽、血の色。

空、藍。

涙、心の色。

命、桜色。

彼岸、藤色。




自分、灰色。
[PR]

by ryo-ta-n | 2006-09-08 03:12 | 雑記  

タバコとライター

俺がタバコを嫌いなのを知っていて、
彼はバッグの中からタバコを一本と、ライタをー一つ、机の上に置いた。




お前さ、この二つのうち、どっちか取らなきゃいけないとして、どっちを取るよ。




俺はライターだと答えた。
彼は実に愉快そうに口元に笑みを浮かべると、やっぱり、と言った。




お前は何が何でも自分の道を進まないと気が済まないんだよ。
自分の前に立つものは優しい顔をしながら容赦なく排除する。
全部が自分の思い通りになるとは思ってないのがせめてもの救いだけれど、
その八方美人の内側にはこのライターのオイルみたいな
どろどろしたモンを溜め込んでるんだよね。


で、俺は ――― 彼は続けた。


俺はこのタバコ。
何にも逆らわず、何の役にも立たず、でも絶対に誰かには必要とされるようなそういう存在。
中毒者みたいな、そういう好き者にしか必要とされないけど。
でも、普段はお前みたいなヤツの前にワザと立ちはだかって、焼かれてみせんのさ。
俺が燃えながら煙を上げて、周りの奴等に警告するんだ、
コイツの本性はこんなんなだよ、って。



言い終えると、彼はそのライターで、そのタバコに火をつけた。



あぁ、そのタバコのように自分を諦められたら、俺は楽になるんだろうか。
彼のような全てを見透かしたような澄んだ目になるんだろうか。
この手には多くの偽物を掴みすぎて、握り締めたまま開けなくなってしまった。
愛も、優しさも、金も、地位も、名声も、全てが偽りでしかない。




…お前、今難しいこと考えてるだろ。
もう少し楽になりなよ。
とりあえず、吸いなって。




そうして俺は、七年振りにタバコに火をつけた。
[PR]

by ryo-ta-n | 2006-09-06 20:08 | 雑記  

傷は塞がらず

許せない。

許せない。



あの日伸ばした手は払いのけられ、あるいは無視された。
全て銃口はマジックミラーの向こう側で俺に向けられていた。



罪を打ち放ち、言い訳を作り出すために。



打ち抜かれたのは体ではなく、むしろ心。
流したものは涙ではなく、恨み。
得られたものは怒りと猜疑心、そしてわずかな寂寥。



これから先、俺は忘れないだろう。
彼らが死んでも忘れられないだろう。
この胸の奥深くに刻まれて、未だに閉じることのない傷と同じ苦しみを
彼らがこの先味わったとしても、俺は忘れられないだろう。



たとえ後悔させて、這いつくばらせて、その先に成す術が何一つない未来に追い詰めても、
許せない。

許せない。

許さない。
[PR]

by ryo-ta-n | 2006-09-04 02:37 | 雑記