対岸

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人で華やぐ対岸の港湾地区。
光の渦に金が消え、時間の渦に明日が押し寄せていく。
僕はかつてあの土地が好きだった。

今僕がいるのは、あの時あそこから見つめていたもう一つの港湾地区。
工場と倉庫、そして申し訳程度の木々があるだけ。
道行く人は少ない。

僕はあの対岸から随分と離れた、この港湾地区の一番先の公園にいる。
ここから眺める対岸は、あそこにいる時は見えなかった表情を見せている。
美しく立ち並んだビル群は、その背に遥か彼方の山々をたたえながら
すねたように同じ光をずっと放っている。


あそこは仮面をつけた本当は寂しい街なんだ。


もちろん今僕がいるここの地区はお世辞にも賑やかとは言えない。
でも、ここには飾らないそのままのこの街の顔がある。
冷たく強い塩風を受けて公園の柵は錆付き、
人は滅多に訪れないがために、ごみ一つ落ちていない青々とした芝生。
そしてこの公園を見下ろすクレーンの首。
誰にも媚びない、ただそこにある公園。



ここはどこまでも僕が素直になれる場所。
対岸の僕を思い出しながら、今の僕を抱きしめる場所。


今日もここから見える、落ちていく夕日は涙が出るほどに切なく、美しい。
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by ryo-ta-n | 2007-05-24 22:53 | 雑記  

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