望んだ言葉は

今日さ、俺、お前のこと見かけたんだよ。
昔よく一緒に出かけたあの通り、お前歩いてただろう。
すぐ分かったよ、だってあんなペンギンみたいな歩き方するの他にいないからさ。

…俺、また同じことを繰り返したんだよ。
お互いに相手の心の奥深くまで立ち入ってしまうってやつ。
あんだけお前とモメたのにさ、ころっと忘れてて。


お前に会わなくなってからガラにもなく、俺荒れてたんだよ。
とめどなく溢れてくる怒りにバカらしいって思ってたし、
止まらない涙にこんなものは時間の無駄って思ってたんだけど、
ホントはひどく寂しかっただけなんだよ、今思えば。

昔は殆ど毎日四六時中一緒に過ごしてたよな。
でも、知らない間に歩み縮めたらいけない相手の心の内まできてて、
別れる寸前は顔を合わせれば不機嫌になって、時には手もあげてさ。


だからさ、俺、こんなみじめな気持ちには二度となりたくないと思って、
心をもう一度閉じたんだよ、お前に会う前みたいに。





随分と長い時間を費やしたけど、俺はまた元気になった。




でもさ、また最近同じことやっちゃったんだよ。
どっかのバカな連中が知らない間に俺の心の内側まで入り込んでて、
どっかのバカもその連中の心の浅からぬ所まで立ち入ってたみたいでさ。

結局はあの時から進歩してなかったんだよ、俺。













あのさ、お前、なんで俺の声がこんなにも低くなってしまったか覚えてるか。
お前が俺の喉笛蹴飛ばしたんだよな。
俺、歌でも食っていけるくらいだったのに全部台無しにしてくれてさ。

でも、俺、お前に会えて良かったって思ってるんだよ、今は。
だって今なら分かるから。





あの時お互いが欲しかったのは理詰めの原因究明でもなくて、
相手を屈服させる優越感でもなくて、もっともっと単純なことだったんだ。





ごめん。




数年過ぎた今、同じことを繰り返し、やっと分かったんだ。
だから背中越しにだけれど、言わせて欲しい。




ごめん。




気づけなくて、ごめん。




傷ついたのは俺だけじゃなかったんだよな、ごめん。






今更気がついても、何もかもがもう手遅れなんだけど、
でも、お前に会わなければきっと今も気がつかなかったよ。
きっとお前ももう気がついてるよな。

だからもう話すことはなにもないさ。

じゃあ、元気で。

ありがとう。






さようなら。
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by ryo-ta-n | 2006-06-08 01:51 | 雑記  

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