無題

ゆっくりと傷をなぞる
触れた指先の生暖かさが
開いたことを
他人事のように覚える

ゆっくりと傷をほじる
指先にこびりついた膿が
昔に起きたことを
無理矢理にやり直させる

それぞれの時に
それぞれの人と

しっかりと結ばれていた縁が
傷を内側から閉じていたことを
溢れた涙で洗いながら
ゆっくりと思い返す


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# by ryo-ta-n | 2017-08-11 00:25  

無題

うまく飛べない人間だと
自覚していたつもり

けれど、本当はうまく飛べないんじゃなくて
飛べない人間だった

その場で跳ねていただけの人間だと
気がついてしまった

よくつまずく人間だと
自覚していたつもり

けれど、本当はつまずいていたんじゃなくて
降りることのできない人間だった

一人舞い上がって高い所に登って
そのまま降りられないのだと

大して高くもないところ目指して跳ねて
大して高くもない所からずり落ちて
もがいているだけの
そんな人間
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# by ryo-ta-n | 2017-07-08 00:30  

無題

揺り起こさないで
眠らせた人懐かしさを

呼び覚まさないで
忘れかけた人の温もりを

掻き乱さないで
捨てきれなかった希望を


もし消えてしまったら
その時だけでいい
私だけを抱きしめて






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# by ryo-ta-n | 2016-11-09 07:13  

無題

本分を思い出せ
私は当事者ではなく、観測者

本懐を思い出せ
なにかを渇望するのではなく、全てを手放す世界

記憶と記録を頼りに
事実だけが交差する世界

安寧と、安息と、安堵を
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# by ryo-ta-n | 2016-10-27 19:04  

無題

ひりひりした不快感から逃れたくて
早く、一日でも早く
全てを一人で決められるように
強さを求めていた

今や、不快感は消えて
求めた以上の強さに
途方のない寂しさを
突きつけられて過ごす

今になって気がつく
あの梅雨のような不快感とは
可能性が詰まった
恵みの時期だったのだと

花を咲かせるために
双葉を捨て
花を散らして
実を結び
そして土へと還り
私達は安寧に抱かれる
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# by ryo-ta-n | 2016-10-02 20:32  

無題

霙に打たれた衣服が重くなり
霧に飲まれた心が薄れていく


死にかけた病人からは、強い命の臭いがして
私の白い服からは、誰かの死の臭いが取れない


幸せを探そうとかざした磁石には
真っ黒な砂鉄がまみれて離れない


溶ける雪が、掌に残した冷たさでその存在を遺していくように
消え行く私も、然にありたい

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# by ryo-ta-n | 2015-12-09 05:46  

無題

燗酒をつけつつ、ちびりちびり
あなたの影を思い出しては、あの時
どんなに夢見心地だったかを思い出す

燗酒を干しつつ、ぐいぐい
あなたの言葉を思い出しては、あの時
どんなに想っていたのかを思い出す

燗酒が冷めて、ほろりほろり
今もあなたと触れながら、この時
愚かな自分をそっと苦笑う

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# by ryo-ta-n | 2015-11-29 19:11 | 雑記  

無題

もうすぐ、夜が明ける

山の端が朱に輝く

東を向いて歩き始める時間が来た



まだ、夜が残る

沖は鈍く紫に煙る

西には抗い難い夢が残る



宵に見始めた夢は、捨てきれないまま毎日過ぎていく
白昼夢こそ見なくなったけれど
未練はそこかしこ
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# by ryo-ta-n | 2015-06-01 04:51 | 雑記  

無題

少ないから弱いとは限らない

多いから正しいとは限らない

誰かの思想や欲望で私を縛るな



大勢のために、誰か一人の命の在り方を決めつける



あらゆる所で嘘をつかせて
違和感に溢れた毎日を
死ぬまで送る


そういう自分で自身を苛ませるような在り方を強要するならば
私は、私の命は、幾度でも牙を剥いて、爪を立てて、挑み続けてやる
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# by ryo-ta-n | 2015-04-02 03:32 | 雑記  

無題

夜の街に滴が落ちる
涙、雨、酒

やがては色を失い
音も失い
本当に存在したのかすら
確信が持てなくなる

全ては曖昧な記憶の中で
心に傷がつかないように
ゆっくりと角を落されていく

ある時は熟成と呼び
ある時は改竄と罵られ
ある時は欺瞞と嘆かれながら

滴の中に映り込んだものが
一体なんだったのか
短い人生の中で
理解なぞできるわけがない

ただその輪郭を
覚え、追い、触れようとする理不尽さは
有限な命への懸命な抗議のように思える


今夜も一日の全てを包み込んだ滴が
胸の奥でひっそりと、そしてはっきりと
落ちていく
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# by ryo-ta-n | 2015-03-04 02:29 | 雑記